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豆知識2026/8/2

猫の目が暗闇で光るのはなぜ?『タペタム』が生み出す夜の超視力の科学

暗い部屋で愛猫の目がキラッと黄緑色に光る――あの現象の正体は網膜の裏にある反射板『タペタム』です。猫が人のわずか6分の1の光でも見える理由、目の色で光り方が変わる話、写真で目が光る対策まで、科学と暮らしの視点でやさしく解説します。

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猫の目が暗闇で光るのはなぜ?『タペタム』が生み出す夜の超視力の科学

夜、電気を消したリビングでふと視線を感じて振り向くと、暗闇の中に黄緑色にキラリと光るふたつの点――愛猫の目がこちらを見ていた。飼い主なら誰もが一度は経験する、少しドキッとする瞬間です。

昼間はあんなにつぶらで愛らしい瞳なのに、なぜ暗い場所ではまるで発光しているかのように光るのでしょうか。「目からビームでも出ているの?」と思いたくなりますが、もちろん猫の目が自ら光っているわけではありません。

この記事では、

  • 猫の目が暗闇で光る本当の理由(キーワードは「タペタム」)
  • 猫が人間よりずっと夜目が利くしくみ
  • 目の色や個体で光り方が違う面白い話
  • 写真を撮ると目が光ってしまうときの対策
  • 光り方の変化から気づける健康のサイン

を、科学的な裏付けとともに、猫との暮らしにそのまま役立つ形でお届けします。読み終わるころには、あの「夜のキラリ」が愛猫の優れた身体能力の証だと分かって、いっそう愛おしく見えるはずです。

結論:光の正体は網膜の裏にある『反射板』タペタム

先に答えをお伝えします。猫の目が暗闇で光るのは、眼球の奥(網膜の裏側)に「タペタム(輝板/きばん)」と呼ばれる反射板があるからです。

外から入ってきたわずかな光は、まず網膜を通り抜けます。このとき網膜で受け取りきれなかった光を、タペタムが鏡のようにもう一度網膜へ跳ね返すのです。その反射した光が瞳孔から外へ漏れ出て、私たちの目には「猫の目が光っている」ように見える、という仕組みです。

つまり猫は目から光を発しているのではなく、周囲のごくわずかな光を反射して返しているだけ。だからこそ、完全な暗室(光がまったくない部屋)では猫の目も光りません。街灯やスマホの画面、月明かりなど、何かしらの光源があって初めて「キラリ」が起きるのです。

このタペタムは猫だけの特殊装備ではありません。犬・キツネ・オオカミといった肉食獣をはじめ、牛や馬、一部の魚や鳥にも見られる、夜や薄暗い環境で活動する動物に共通の進化的な工夫です。(出典:ニデック「猫の目が光るのはなぜ?」、子猫のへや「タペタム(輝板)の構造と機能」)

タペタムが実現する「人間の6分の1の光で見える」超視力

では、なぜ猫にはこんな反射板が備わっているのでしょうか。答えは猫の暮らし方にあります。

猫はもともと薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)――夜明けと夕暮れの薄暗い時間帯に狩りをする動物です。ネズミなどの獲物が動き出すその時間に、わずかな光を最大限に活用して獲物を見つける必要がありました。

光を二度使う「増幅装置」

ヒトの目は、入ってきた光を網膜で一度受け取ったら、それで終わりです。ところが猫の目では、

  1. 入ってきた光が網膜に当たる(1回目)
  2. 通り抜けた光をタペタムが反射する
  3. その反射光が再び網膜に当たる(2回目)

というように、同じ光を二度使って感度を稼いでいます。少ない光でもしっかり像を結べるよう、いわば「光の増幅装置」を積んでいるわけです。

暗さに強い細胞が人の数倍

さらに猫の網膜には、暗い場所で働く桿体細胞(かんたいさいぼう)という光センサーが、人間よりずっと多く詰まっています。この「暗所に強い細胞の多さ」と「タペタムによる光の二度使い」が合わさることで、猫は人間が必要とする光のおよそ6分の1程度の明るさでも、周囲をしっかり見渡せるとされています。(出典:子猫のへや、にゃんペディア「猫の目・視力はどのくらい?」)

真っ暗に見える部屋でも、猫にとってはうっすら見えている――夜中に電気を消しても猫が家具にぶつからず歩けるのは、この夜間視力のおかげなのです。

一方で「光を二度使う」代わりに像が少しにじむため、猫の視力(細かいものを見分ける力)自体は人間より低めで、色の見え方も人とは異なります。猫がどんな世界を見ているのかは、色覚の違いを扱ったこちらの記事もあわせてどうぞ。

▶ 関連記事: 犬と猫は世界を何色で見ている?人とは違う『色の見え方』の科学

暗い場所での愛猫の様子をそっと見守りたいなら、赤外線ナイトビジョン付きのペット見守りカメラを使うと、猫を驚かせずに夜の行動を確認できます。

目の色で光り方が変わる? 黄緑・青・赤の不思議

愛猫の目が光る色をよく見ると、黄緑色っぽかったり、青みがかっていたりと、猫によって微妙に違うことに気づきます。これはタペタムの構造や、目に含まれる色素の量によって、反射する光の波長が変わるためです。

一般に猫の目は黄色〜黄緑色に光ることが多いのですが、子猫や一部の猫では青っぽく光ることもあります。とくに青い瞳(ブルーアイ)の猫や白猫では、色素が少ないぶんタペタムの反射に赤みが混じり、赤く光って見えるケースもあります。同じ家の兄弟猫でも光る色が違って見えるのは、こうした個体差によるものです。

動物によっても光る色はさまざま

タペタムは種類によって反射する色に個性があります。犬は緑〜青緑、猫は黄緑、牛は青緑がかった色に光ることが多いといわれます。夜道で車のライトに照らされたタヌキやシカの目が光るのも、同じタペタムのはたらきです。夜の動物たちが一様に目を光らせるのは、それぞれが「薄暗い環境を生き抜くための光学装置」を進化の中で手に入れてきた証なのです。

ちなみに、私たち人間の目にはタペタムがありません。だから暗い場所でヒトの目は光らず、その代わり昼間の細かい色や形を見分ける力に長けています。「昼に強いヒト」と「夜に強い猫」――目の作りの違いが、そのままお互いの得意な時間帯を物語っているのです。

ここで飼い主が知っておくと安心なのが、「片目だけ光り方が明らかに違う」「いつもと色がはっきり変わった」ときは注意が必要という点です。左右で反射の色や強さが極端に違う場合、目の奥のトラブルが隠れていることもあるため、気になるときは獣医師に相談しましょう(詳しくは後半の健康の章で触れます)。

猫が暗い場所でこちらを見つめる姿は、実は目だけでなくヒゲでも周囲を精密にとらえています。あの繊細なセンサーの秘密はこちらで詳しく紹介しています。

▶ 関連記事: 猫のヒゲには『第六感』が詰まっている――切ってはいけない科学的な理由

なぜ写真で目が光る? フラッシュ撮影の「メカニズム」と対策

「愛猫の可愛い姿を撮ろうとしたら、目が真っ黄色(真っ赤)に光って台無し……」という経験はありませんか。これもタペタムの仕業です。

暗い場所ではフラッシュが光る瞬間、猫の瞳孔は大きく開いています。そこへ強い光が飛び込むと、タペタムがその光を勢いよく反射し、カメラのレンズにまっすぐ返してしまう。結果として、目がギラリと光った写真になるのです。人間の「赤目現象」の猫バージョン、と考えると分かりやすいでしょう。

光らせずに撮るコツ

  • フラッシュを使わない:いちばん確実。代わりに部屋の照明を明るくする
  • 明るい窓辺など自然光で撮る:昼間の柔らかい光がベスト
  • カメラと目線をずらす:真正面からではなく、少し斜めから撮ると反射が返りにくい
  • 少し離れてズームで撮る:反射光がレンズに直接入りにくくなる
  • リングライトや間接照明を活用:スマホ用のクリップ式LEDライトを使うと、フラッシュなしでも明るく撮れます

猫は強いフラッシュを嫌がることも多いので、目の保護とストレス軽減の両面から、できるだけ自然光やフラッシュなし撮影を心がけたいところです。

暗い部屋で猫が快適に過ごすための工夫

猫は夜目が利くとはいえ、完全な暗闇では猫も見えません(タペタムは「わずかな光」を増幅する装置なので、光ゼロでは機能しない)。留守番や夜間、猫が安心して過ごせるよう、次のような工夫がおすすめです。

  • 常夜灯やフットライトをひとつ点けておく:わずかな光があれば猫の夜間視力が働き、段差や家具を避けて動けます。人感センサー付きのフットライトなら電気代も控えめ
  • 足場や通り道を片づけておく:暗い時間に猫が走り回っても安全なよう、床の障害物を減らす
  • 高い場所と隠れ家を用意する:薄暗い時間に活発になる猫のために、上下運動できる環境を整える。キャットタワー選びはこちらの記事も参考にどうぞ
  • 夜の運動不足を昼のうちに解消:夕方に猫じゃらしなどのおもちゃで狩りごっこをしてあげると、夜中の大運動会が落ち着きやすくなります

▶ 関連記事: 失敗しないキャットタワーの選び方――高さ・素材・置き場所の完全ガイド

光り方の変化は健康のサインになることも

タペタムによる目の反射は、ときに猫の健康状態を映す鏡にもなります。日頃の「光り方」を覚えておくと、変化に早く気づけます。次のようなサインがあれば、念のため獣医師に相談すると安心です。

  • 片目だけ光り方(色・強さ)が急にはっきり変わった
  • 今まで光っていた目が、あまり光らなくなった/白っぽく濁って見える
  • 暗い場所でやたらと物にぶつかる、動きたがらない
  • 瞳孔の開き方が左右で大きく違う

高齢の猫では、目の奥の網膜やタペタムの働きが年齢とともに変化し、夜間視力が落ちてくることもあります。若い頃はスイスイ歩けていた暗い廊下で戸惑うようになったら、視力の変化のサインかもしれません。シニア期の猫の暮らしを見直すきっかけにしてください。

もちろん、ここで挙げたのはあくまで「気づきのヒント」です。目や視力の異常は自己判断が難しく、進行すると治療が難しくなるものもあります。少しでも「いつもと違う」と感じたら、早めにかかりつけの獣医師に診てもらいましょう。日頃から愛猫の目をよく観察しておくことが、いちばんの予防になります。

まとめ:あの「夜のキラリ」は優れた夜行性ハンターの証

猫の目が暗闇で光る理由を、あらためて整理します。

  • 光の正体は、網膜の裏にある反射板**「タペタム」**が周囲のわずかな光を反射しているため
  • 猫は自ら発光しているのではなく、光源があって初めて光る(真っ暗では光らない)
  • タペタムと豊富な桿体細胞のおかげで、人間の約6分の1の光でも周囲が見える夜間視力を持つ
  • 目の色素やタペタムの構造で、黄緑・青・赤など光る色が変わる
  • 写真で目が光るのは人間の赤目現象と同じ仕組み。フラッシュを避ける・斜めから撮ると防げる
  • 片目だけ光り方が違う/急に濁るなどの変化は、健康チェックのサインになる

夕暮れに狩りをしてきた祖先の記憶を、現代の愛猫も体の中に確かに受け継いでいます。今夜、暗い部屋で愛猫の目がキラリと光ったら、「これは名ハンターの証なんだな」と、その進化の物語に思いを馳せてみてください。そして、光り方の変化にはやさしく目を配ってあげてくださいね。


出典・参考

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。愛猫の目や視力に気になる症状がある場合は、自己判断せず必ず獣医師にご相談ください。

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