猫がマタタビに『ゴロゴロ酔う』本当の理由|最新研究が突き止めた『蚊よけ説』と安全な楽しませ方
猫がマタタビでゴロゴロ転がるのはなぜ?岩手大・京都大などの最新研究で、あの反応は『蚊を避けるため』の合理的な行動だと判明。あの豹変の正体から反応しない猫の理由、安全な与え方までまとめて解説します。

猫がマタタビに『ゴロゴロ酔う』本当の理由|最新研究が突き止めた"蚊よけ説"と安全な楽しませ方
マタタビの枝を差し出した瞬間、それまで澄ました顔をしていた愛猫が、床にゴロンと転がって身体をこすりつけ、うっとりと目を細める——。「マタタビに酔う」という言葉があるほど、猫のあの豹変ぶりは飼い主にとってお馴染みの光景です。
でも、ふと不思議に思ったことはありませんか。「そもそも、なぜ猫はマタタビにだけあんな反応を見せるの?」「ただ気持ちいいだけ?」「うちの子は全然反応しないけど、大丈夫なの?」——。
実はこの"マタタビ反応"、長らく「猫が快感を得るための謎の行動」と片づけられてきました。ところが2021年以降、日本の研究チームが世界を驚かせる答えを突き止めます。マタタビ反応は、猫が『蚊を避ける』ために進化させた、極めて合理的な行動だったのです。
この記事では、行動学と最新研究の知見をもとに、マタタビ反応の本当の意味を5つの視点から解き明かします。あわせて、反応しない猫がいる理由や、愛猫に安全に楽しませてあげるためのポイントもまとめました。
結論:マタタビ反応は"防虫のためのセルフケア"だった
先に答えを言ってしまいましょう。
京都大学・岩手大学・英リバプール大学などの共同研究チームは、マタタビに含まれる「ネペタラクトール」という成分に、蚊を寄せ付けない忌避(きひ)作用があることを発見しました。猫がマタタビに顔や身体をこすりつけるのは、この成分を全身の毛に塗り込み、蚊に刺されにくい身体をつくる"セルフ防虫"の行動だったのです。
つまり、「気持ちよさそうにゴロゴロしている」ように見えるあの姿は、猫にとっては野生で身を守るための、理にかなったケア行動だったというわけです。以下で、その仕組みを詳しく見ていきましょう。
理由①:マタタビの主役成分は「ネペタラクトール」
かつて、猫を惹きつけるマタタビの成分は「マタタビラクトン」などと考えられてきました。しかし研究チームが改めて分析したところ、猫の反応をもっとも強く引き出しているのは「ネペタラクトール(nepetalactol)」という物質であることが分かりました。
このネペタラクトールを紙にしみ込ませて猫に差し出すと、純粋なマタタビと同じように、猫は顔や頭をこすりつけ、ゴロゴロと転がる反応を示しました。逆にこの成分を取り除いたマタタビでは、反応が大幅に弱まります。あの豹変を引き起こしている"スイッチ"の正体が、この一つの化合物だったというわけです。
なお、猫がマタタビの香りを感知する仕組みには、鼻の奥にある特殊なにおいセンサー「ヤコブソン器官(鋤鼻器)」が深く関わっています。この器官のはたらきについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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理由②:「顔をこすりつける」のは成分を毛に塗るため
研究のハイライトは、猫の"こすりつけ行動"そのものに意味があると突き止めた点です。
チームが、ネペタラクトールを頭に塗った猫と、塗っていない猫を、それぞれ蚊のいる空間に入れて比較したところ——ネペタラクトールを塗った猫の頭にとまる蚊の数は、おおよそ半分に減ったという結果が得られました。
猫がマタタビに顔や頭からダイブし、身体をこすりつけてゴロゴロと転がるのは、単なる恍惚のポーズではありません。**忌避成分を体表のすみずみまで行き渡らせる、効率的な"塗布動作"**だったのです。蚊は感染症を媒介する厄介な存在ですから、蚊を遠ざける術を身につけた個体は、野生でより有利に生き延びられたと考えられます。
蚊やノミ・マダニといった吸血性の虫が猫にもたらすリスクについては、こちらもあわせてどうぞ。
▶ 関連記事: 猫のノミ・マダニ・SFTS対策2026|命に関わる感染症を防ぐ
理由③:「舐める・噛む」行動にも合理的な意味がある
「うちの子はこすりつけるだけでなく、マタタビをガジガジ噛んだり舐めたりする」——そんな声も多いはず。この行動にも、続く研究で意味があることが分かりました。
猫がマタタビの葉を舐めたり噛んだりして傷つけると、ネペタラクトールを含む有効成分の放出量が増えるうえに、成分の組成そのものが変化して、蚊を遠ざける効果がさらに高まることが確認されたのです。
言い換えれば、猫は「葉を噛んで有効成分をより多く引き出し」→「その成分を身体にこすりつけて塗り込む」という、二段構えの防虫ケアを本能的に行っていたことになります。何気ないガジガジにも、ちゃんと理由があったのですね。
理由④:反応しない猫がいるのは"異常"ではない
「マタタビをあげても、うちの子はまったく無反応…」と心配になる飼い主さんもいますが、これは決して珍しいことでも、異常でもありません。
一般に、マタタビやキャットニップにはっきり反応する猫は、全体のおよそ7割前後とされ、残りの猫はほとんど、あるいはまったく反応しないと言われています。反応の有無には、次のような要素が関わると考えられています。
- 遺伝的な体質:反応するかどうかは、生まれつきの傾向に左右されるとされる
- 年齢:ごく幼い子猫(生後数か月まで)は反応が出にくい傾向があり、高齢になると反応が弱まる場合もある
- 個体差・その日の気分:同じ猫でも、体調や環境によって反応の強さは変わる
つまり、無反応な猫は「マタタビが効かない体質なだけ」であり、健康上の問題ではありません。「反応しない=どこか悪い」ではないので、安心してください。
理由⑤:キャットニップ・キウイも"仲間"
マタタビと似た反応を引き起こす植物として、海外では「キャットニップ(西洋マタタビ/イヌハッカ)」が有名です。こちらにも、ネペタラクトールと近い「ネペタラクトン」という成分が含まれており、同じ仕組みで猫を惹きつけます。
また、意外なところでは**キウイフルーツの枝や葉、木天蓼(もくてんりょう)**なども、猫が反応を示すことがあります。これらはいずれもマタタビと化学的に近い成分を持つ"親戚"のような存在です。
愛猫がマタタビに反応しない場合でも、キャットニップには反応することがあります。反応の相性は個体によって違うので、いくつか試してみると「うちの子のお気に入り」が見つかるかもしれません。市販のキャットニップ(またたび)おもちゃは、手軽に楽しませてあげる入り口としておすすめです。
豆知識:「マタタビ」という名前の由来
ちなみに「マタタビ」という名前には、いくつかの説があります。よく知られているのは、「疲れた旅人がマタタビの実を口にすると元気を取り戻し、"また旅"を続けられた」ことに由来するという説。ほかにも、アイヌ語で果実を意味する言葉が転じたという説もあります。真偽のほどは定かではありませんが、古くから人と猫の暮らしの近くにあった植物だからこそ、こうした逸話が生まれたのでしょう。
マタタビは日本や東アジアの山地に自生するつる性の植物で、夏には梅に似た白い花を咲かせます。人にとっても実は塩漬けや果実酒などに利用されてきた、身近な植物なのです。
飼い主へ:安全に楽しませるための5つのポイント
マタタビは正しく使えば、猫の気分転換やストレス解消、爪とぎ・運動の誘導などに役立つ心強いアイテムです。とはいえ、与え方にはいくつか注意点があります。
1. 量は「ほんの少し」で十分
マタタビは少量でしっかり反応します。粉末なら耳かき1杯程度、実や枝もごく少量で十分。与えすぎは避け、"たまのご褒美"くらいの頻度にとどめましょう。マタタビ粉末は量の調整がしやすく、おもちゃにふりかけるだけで使えて便利です。
2. 実(果実)や大きな枝は"誤飲"に注意
粉末は比較的安心ですが、実や太い枝、硬い木片は、噛んでいるうちに誤って飲み込んでしまうことがあります。とがった木片は口内やのどを傷つける恐れもあるため、与える時は必ずそばで見守り、遊び終わったら片づけましょう。またたびの実を使う場合は、特に目を離さないようにしてください。
3. 興奮しすぎる子は落ち着くまで見守る
反応が強い猫は、一時的にハイテンションになって走り回ったり、噛みつきが強くなったりすることがあります。危険なもの(コード類・割れ物など)の近くでは与えず、興奮が落ち着くまで穏やかに見守ってあげましょう。
4. 子猫・シニア・持病のある子は控えめに
ごく幼い子猫にはそもそも反応が出にくく、無理に与える必要はありません。高齢の猫や持病のある猫では、強い興奮が負担になる場合もあるため、初めて与える時は少量から様子を見て、心配なら獣医師に相談を。
5. あくまで"嗜好品"。フードの代わりにはならない
マタタビは楽しみやリラックスのためのアイテムであって、栄養を補うものではありません。日々の健康を支える土台は、やはり毎日の食事です。良質なフード選びに迷ったら、素材にこだわった国産・無添加系のキャットフードも選択肢に入れてみてください。総合栄養食をベースに、マタタビは"ときどきのお楽しみ"として上手に取り入れるのが理想です。
なお、猫がリラックスして飼い主に心を許しているサインは、マタタビ以外にも日常のしぐさに表れます。愛猫の"好き"のサインを読み解きたい方は、こちらもどうぞ。
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まとめ|あのゴロゴロには、ちゃんと理由があった
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 猫のマタタビ反応は、成分「ネペタラクトール」によって引き起こされる
- 顔や身体をこすりつけるのは、蚊を避ける忌避成分を毛に塗り込む"セルフ防虫"行動
- 葉を噛む・舐めるのも、有効成分を増やして効果を高める合理的な行動
- 反応する猫は約7割。反応しなくても異常ではない(遺伝・年齢・個体差による)
- 与える時は少量・見守り・誤飲注意を守れば、良い気分転換になる
「ただ酔っているだけ」に見えたあの姿の裏に、蚊から身を守るという野生の知恵が隠れていた——そう思うと、次にマタタビでゴロゴロする愛猫が、少し違って見えてくるかもしれません。
気になる体調の変化(急に反応しなくなった、興奮のしかたが明らかにおかしい等)が見られる場合は、自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談してくださいね。


