犬の血液型は8種類以上あった|『DEA式』の仕組みと、いざという輸血で命を分けるDEA1.1の話
犬の血液型は人間の4種類より多く、DEA式で8種類以上、実際の組み合わせは13型以上とも言われます。なぜこんなに複雑なのか、輸血でDEA1.1がなぜ重要なのか、初回輸血のリスク、献血ドナー犬の話、そして『血液型で性格は決まらない』理由まで、愛犬の“もしも”に備える視点でやさしく解説します。

「犬にも血液型ってあるの?」と聞かれると、意外と答えに詰まる飼い主は多いのではないでしょうか。人間ならA・B・O・ABの4種類がすぐ思い浮かびますが、愛犬の血液型を知っている人はごくわずかです。
実は、犬の血液型は人間よりもずっと種類が多く、基本の分類だけで8種類、組み合わせを含めると13型以上あるとも言われています。 そして、この「血液型」がふだんの暮らしで話題になることはほとんどありませんが、たった一度、輸血が必要になったそのときだけは、愛犬の命を左右する重要な情報になり得ます。
この記事では、犬の血液型が採用している「DEA式」という仕組みをやさしく解きほぐしながら、なぜこんなに複雑なのか、輸血でカギを握る「DEA1.1」とは何か、そして「血液型で性格は決まるの?」という素朴な疑問まで、飼い主目線で整理していきます。読み終えるころには、愛犬の“もしも”に一歩備えられる知識が身についているはずです。
結論:犬の血液型は「DEA式で8種類」、実際の型はもっと多い
先に要点をまとめておきます。
- 犬の血液型は DEA式(Dog Erythrocyte Antigen=犬赤血球抗原) という分類方法で表される
- DEAには DEA1・DEA3・DEA4・DEA5・DEA7 など、大きく8種類前後の型がある
- 1匹の犬は複数のDEAを同時に持てるため、組み合わせると実際の血液型は13型以上にもなる
- ふだんの生活で血液型を意識する場面はほぼないが、輸血のときだけは非常に重要
- なかでも DEA1.1(DEA1) は強い免疫反応を起こしやすく、輸血で特に注意される
- 人間と違い、犬は血液型で性格が変わるという科学的根拠はない
つまり、「犬の血液型は人間より複雑だけれど、知っておく最大のメリットは“いざという輸血に備えられること”」――これがこの記事のいちばん大事なメッセージです。
犬の血液型「DEA式」ってどんな仕組み?
人間のABO式は「AとBという抗原を持っているかどうか」で4パターンに分ける、比較的シンプルな仕組みです。それに対して犬が使うのが DEA式 です。
DEAは Dog Erythrocyte Antigen(犬赤血球抗原) の略で、赤血球の表面にある「目印(抗原)」の種類を表しています。DEAには番号が振られていて、DEA1、DEA3、DEA4、DEA5、DEA7……というように、大きく8種類前後が知られています。
ここがポイントなのですが、人間のように「どれか1つの型に決まる」のではなく、犬は複数のDEAを同時に持つことができます。 それぞれの抗原について「持っている(+)/持っていない(−)」があるため、たとえば「DEA1.1が(−)、DEA3が(−)、DEA4が(+)、DEA7が(+)」といったように、組み合わせで血液型が決まるのです。
この掛け算のような仕組みのおかげで、DEAの基本は8種類前後でも、実際の血液型の組み合わせは 13型以上にもなると言われています。人間の4種類と比べると、いかに犬の血液型が複雑かが分かります。
番号のあとの「.1」「.2」は何?
DEA1には「DEA1.1」「DEA1.2」といった枝番がついていることがあります。これはDEA1という大きなグループの中の細かい分類で、輸血の現場ではこの **DEA1.1を持っているか(陽性)/持っていないか(陰性)**が特に重視されます。難しく感じるかもしれませんが、「DEA1.1という特に大事な目印がある」とだけ覚えておけば十分です。
なぜ犬の血液型はこんなに複雑なのか
「そもそもなぜ犬はこんなに多くの血液型を持つの?」という疑問は自然なものです。
血液型(赤血球の表面抗原)は、もともと種ごと・個体ごとに多様性があるもので、これは犬に限った話ではありません。猫にも血液型があり、牛や馬ではさらに多くの型が知られています。赤血球の目印のバリエーションが多いほど、その種の遺伝的な多様性も豊かだと考えることができます。
犬は長い歴史のなかで、地域や用途に応じてさまざまな犬種へと枝分かれしてきました。犬種ごとに体の大きさや被毛が違うように、血液型の分布にも犬種による偏りがあることが知られています。こうした多様性の積み重ねが、DEA式の複雑さの背景にあると考えられています。
体の個体差という意味では、鼻の模様が一頭ごとに違う「鼻紋」も面白いトピックです。血液型と同じく、犬にはまだまだ知られていない“その子だけの個性”がたくさんあります。
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血液型が本当に大切になる場面=「輸血」
ここまで読んで、「複雑なのは分かったけど、実際いつ役に立つの?」と思った方も多いはずです。答えは明確で、血液型がもっとも重要になるのは「輸血」のときです。
犬が輸血を必要とするのは、たとえば次のような場面です。
- 交通事故や大きなケガによる大量出血
- 手術中・手術後の出血
- 免疫の異常で赤血球が壊れてしまう病気(免疫介在性溶血性貧血など)
- 一部の中毒や、重い寄生虫症による貧血
こうした緊急時、失われた血液を補うために、別の犬から提供された血液を輸血することがあります。このとき、提供する側(ドナー)と受ける側(レシピエント)の血液型が合っていないと、体が「これは自分のものではない」と判断して免疫反応を起こし、かえって危険な状態になることがあるのです。
だからこそ、動物病院では輸血の前に 血液型の確認や「クロスマッチ試験(交差適合試験)」 を行い、安全に輸血できる相手かどうかをチェックします。
輸血のカギを握る「DEA1.1」
数あるDEAの中でも、輸血で特に注目されるのが DEA1.1(DEA1陽性かどうか) です。
DEA1.1は 強い免疫反応を引き起こしやすい性質を持っています。ざっくり整理すると、次のようなイメージです。
- DEA1.1(−)の血液は、DEA1.1(−)の犬にも(+)の犬にも比較的輸血しやすい
- DEA1.1(+)の血液を、DEA1.1(−)の犬に輸血するのはリスクを伴う
このため、献血ドナーとして特に価値が高いのは DEA1.1(−)の犬だと言われています。人間の輸血でO型が「万能ドナー」と呼ばれることがあるのと、少し似た考え方です(ただし仕組みはまったく別物なので、あくまでイメージとして捉えてください)。
「初めての輸血は問題が出にくい」って本当?
犬の輸血には、人間とは違う特徴があります。それは、初めての輸血では血液型が多少違っても、すぐに深刻な反応が出にくいということです。
これは、犬が生まれつき「自分の持っていないDEAを攻撃する抗体」をあまり持っていないためだと考えられています。ところが、一度輸血を受けると体が抗体を作るため、2回目以降の輸血では血液型の不一致が大きな問題になり得ます。 「初回は大丈夫だったから」と油断できないのはこのためで、だからこそ動物病院は毎回きちんと適合検査を行うのです。この繊細さこそ、犬の血液型を“知っておく価値”がある理由と言えます。
愛犬の血液型は調べられる? 献血ドナーという選択肢
「じゃあ、うちの子の血液型を先に知っておいたほうがいいの?」という疑問はもっともです。
犬の血液型は、動物病院で 血液検査によって調べることができます。特にDEA1.1が陽性か陰性かを判定するキットが使われることが多く、健康診断のついでに相談できる場合もあります。すべての犬に必須の検査というわけではありませんが、大きな手術を控えているときや、献血ドナーへの登録を考えているときには意味のある情報になります。
近年は、輸血用の血液を確保するために 「供血犬(献血ドナー犬)」を募集している動物病院や団体もあります。一般的なドナーの条件としては、次のようなものが挙げられます(施設によって基準は異なります)。
- 心身ともに健康で、ワクチン接種・寄生虫予防をきちんと行っている
- 一定以上の体重がある(大型犬が向いていることが多い)
- 年齢が若〜壮年で、性格が穏やか
- フィラリアなどの感染症がない
もし愛犬が条件に合うなら、献血は「別の犬の命を救う」貢献にもなります。関心がある場合は、かかりつけの獣医師に一度たずねてみるとよいでしょう。
日ごろの健康管理を記録しておくと、こうしたいざというときにも役立ちます。ワクチン歴や既往症をまとめておけるペット用の健康管理ノートを1冊用意しておくと安心です。
「血液型で性格が分かる」は犬には当てはまらない
人間では「A型は几帳面」「O型はおおらか」といった血液型占いが人気ですが、犬の血液型と性格には、科学的な関連は認められていません。
犬の性格を形づくるのは、おもに次のような要素です。
- 犬種による気質の傾向
- 子犬期の社会化の経験
- 育った環境や飼い主との関わり方
- しつけやふだんの接し方
「うちの子はDEA1.1陽性だから甘えん坊」といった関係はありません。血液型はあくまで輸血のときに命を守るための医学的な情報であって、性格診断の材料ではない――ここは押さえておきたいポイントです。愛犬の性格を伸ばしたいなら、血液型よりも日々のふれあいや遊びのほうがずっと大切です。
飼い主として、いざというときにできる備え
血液型そのものは、知っていてもふだんは出番のない知識かもしれません。それでも、「もしも」の輸血や大ケガに備える視点は、すべての飼い主にとって意味があります。最後に、今日からできる備えを整理しておきます。
1. かかりつけ医との関係をつくっておく 緊急時にすぐ相談できる動物病院があることは、何よりの安心材料です。夜間・救急に対応してくれる病院も事前に調べておきましょう。
2. 健康情報を1か所にまとめておく 血液型(調べた場合)、ワクチン歴、持病、飲んでいる薬などをまとめておくと、急な受診や災害時にスムーズです。ペット用の救急セットや、体調の変化に気づけるペット用体温計を備えておくのもおすすめです。
3. 災害時の持ち出しを想定しておく 大きな災害では、ケガや持病の悪化で医療が必要になることもあります。フードや水だけでなく、健康情報や常備薬を含めた「ペットの防災」を一度見直しておきましょう。ペット用防災グッズを非常持ち出し袋に入れておくと安心です。
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4. 医療費の備えを考えておく 輸血や緊急手術は高額になることがあります。若いうちからのペット保険や貯蓄で、「お金の理由で治療をあきらめない」体制を整えておくことも、立派な備えのひとつです。
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なお、この記事はあくまで一般的な知識をまとめたものです。気になる症状があるときや、輸血・手術の判断が必要なときは、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。
まとめ:血液型を知ることは、愛犬の“もしも”に備えること
最後に要点を振り返ります。
- 犬の血液型は DEA式で表され、基本は 8種類前後、組み合わせると 13型以上
- 1匹が複数のDEAを持てるため、人間のABO式よりずっと複雑
- 血液型がもっとも重要になるのは 輸血のとき
- なかでも DEA1.1は強い免疫反応を起こしやすく、DEA1.1(−)の犬は貴重なドナーになり得る
- 初回輸血は問題が出にくいが、2回目以降は不一致が大きなリスクになる
- 血液型は動物病院で検査でき、献血ドナーという社会貢献の道もある
- 血液型で性格は決まらない――性格は犬種・環境・育て方で形づくられる
ふだんは意識することのない犬の血液型ですが、その仕組みを知っておくことは、愛犬の「もしも」に静かに備えることにつながります。次の健康診断のとき、「うちの子の血液型って調べられますか?」と一言たずねてみる――それだけでも、大切な一歩になるはずです。
出典・参考
- 日本動物医療センター「愛犬の血液型知ってますか?」 https://jamc.co.jp/dog_colum/765/
- PECO「【獣医師監修】犬の血液型について。特徴や種類から輸血時の注意まで」 https://peco-japan.com/71597
- アニコム損保 犬との暮らし大百科「犬の血液型、知っておくメリットは?性格との関係は?」 https://www.anicom-sompo.co.jp/inu/5323.html
- 犬と猫の緩和ケア「犬の血液型|犬の血液型は8種類?DEAについて獣医師が解説」 https://inunekokaigo.com/canaine-blood-type/
- POCHI 獣医師コラム「犬の血液型は何種類?輸血を行う時の注意点と犬の血液について」 https://www.pochi.co.jp/ext/magazine/2021/12/vets-column2112.html
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。愛犬の健康について不安がある場合は、必ず獣医師にご相談ください。


