犬と猫に見えている『色の世界』は人間と全然違う|科学が解き明かす二色型色覚とおもちゃ選びのコツ
犬と猫にはどんな色が見えているのか。人間の三色型に対し、犬猫は青と黄色を中心とした二色型色覚。真っ赤なボールが見えにくい理由や、暗闇に強いタペタムの仕組み、UV(紫外線)が見える可能性まで、最新研究をやさしく解説。おもちゃ選びのヒントも紹介します。

ドッグランで愛犬に真っ赤なボールを投げたのに、なぜか鼻先の芝生をクンクン探し回ってなかなか見つけられない――そんな経験はありませんか。あるいは、せっかく買った鮮やかな赤いおもちゃに、愛猫がまったく興味を示さない。
「うちの子、目が悪いのかな?」と心配になるかもしれません。でも、それはおそらく視力の問題ではありません。犬や猫の目には、人間が見ている『赤』がそもそも私たちと同じようには映っていないのです。
犬と猫が見ている色の世界は、人間のそれとは驚くほど違います。この記事では、
- 犬と猫にはどんな色が見えているのか
- 真っ赤なおもちゃが見えにくい科学的な理由
- 暗闇でも目が光るほど夜目が利く仕組み
- 「色が見える/見えない」を踏まえたおもちゃ選びのコツ
を、最新の研究をもとにやさしく解説します。愛犬・愛猫の"見ている世界"を知れば、毎日の遊びやお散歩がもっと楽しくなるはずです。
結論:犬も猫も「青と黄色」の世界に生きている
先に答えをお伝えします。
犬と猫は、人間のように豊かな色の世界を見ているわけではありません。どちらも「青」と「黄色」を中心とした、やや淡い二色の世界を見ていると考えられています。人間には鮮やかに見える赤やオレンジ、緑は、犬猫にはくすんだ黄色〜灰色っぽく映り、はっきりとは区別できません。
これは「色盲(色覚異常)」という病気ではなく、その動物が進化の過程で獲得した正常な目の設計です。人間から見れば色数は少なく感じますが、犬や猫にとっては、夜の狩りや動くものの察知に最適化された、理にかなった視覚なのです。
ではなぜ、そんな違いが生まれるのでしょうか。カギを握るのは、目の奥にある「錐体(すいたい)細胞」という色を感じるセンサーです。
色を見分ける仕組み「錐体細胞」とは
私たちが色を認識できるのは、目の網膜(もうまく)にある錐体細胞のおかげです。錐体細胞は、特定の波長の光に反応する光センサーで、その"種類の数"が、見分けられる色の豊かさを決めます。
人間は「三色型色覚」
人間の目には、赤・緑・青の3種類の錐体細胞があります。この3つのセンサーが受け取った信号を脳が組み合わせることで、私たちは赤・橙・黄・緑・青・藍・紫といった虹の全色や、その中間の微妙な色合いまで、およそ100万色以上を見分けられるとされます。これを**三色型色覚(トリクロマシー)**と呼びます。
犬と猫は「二色型色覚」
一方、犬と猫の目には、錐体細胞が原則2種類しかありません。青系に反応するセンサーと、黄〜緑系に反応するセンサーの2つです。人間が持つ「赤に反応するセンサー」を欠いているため、赤い光を"赤"として捉えることができません。これが**二色型色覚(ダイクロマシー)**です。
1989年に犬の網膜が調べられた研究では、犬には黄色と青色に感受性を持つ2種類の錐体があることが確認され、犬が黄色・青色と、その組み合わせの色を識別していることが示されました。
つまり、人間が3色のクレヨンで世界を描いているとすれば、犬や猫は青と黄色の2色クレヨンで世界を描いているようなイメージです。
犬と猫には具体的にどんな色に見えているのか
「二色型」と言われても、実際にどう見えているのかピンとこないかもしれません。研究で分かっている犬・猫の色の見え方を、身近な色で整理してみましょう。
| 人間が見る色 | 犬・猫におおよそ見えている色 |
|---|---|
| 赤 | 暗い茶色〜黒っぽい灰色(目立たない) |
| オレンジ | くすんだ黄色 |
| 黄色 | 黄色(比較的はっきり) |
| 緑 | 黄色っぽい色(赤と区別しづらい) |
| 水色・青 | 青(比較的はっきり) |
| 紫 | 青っぽい色 |
ポイントは、犬猫は「青と黄色」ははっきり区別できる一方、「赤と緑」の見分けが苦手という点です。これは、人間でいうところの「赤緑色覚異常」に近い見え方だと考えられています。実際、イタリアのバーリ大学の研究チームは、人間の色覚検査に使われる「石原表(いしはらひょう)」を応用したテストを犬に行い、犬が赤と緑の区別に苦労するという結果を『Royal Society Open Science』に報告しています。
だからこそ、冒頭の**「緑の芝生の上に転がる赤いボール」**は、犬にとっては背景と同化してほとんど目立たない存在になってしまうのです。人間にはこれ以上ないほど目立つ色の組み合わせでも、犬の目には"どちらもくすんだ黄色っぽい何か"にしか見えていないわけです。
なお、猫については近年、緑に反応する錐体の働きなどをめぐって「犬よりもう少し複雑な色を見ている可能性がある」とする研究もありますが、基本的には犬と同じく青と黄色が中心の世界という点で共通しています。
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なぜ犬と猫は「色数」を捨てたのか
「色がたくさん見えたほうが便利なのに、なぜ2色に減ってしまったの?」と思うかもしれません。ここには、犬や猫の祖先が生き抜いてきた進化の物語が隠れています。
犬や猫の祖先は、主に**薄暗い明け方や夕暮れ、夜に活動する狩人(ハンター)**でした。暗い環境で獲物を捕らえるために最も大切なのは、豊かな色を見分ける能力よりも、
- わずかな光でもモノを捉える暗視力
- サッと動く獲物を素早く察知する動体視力
でした。そして目の中には、色を見る「錐体細胞」と、明暗を見る「桿体(かんたい)細胞」の"設置スペース"に限りがあります。犬や猫は、色を感じる錐体を減らす代わりに、暗さに強い桿体細胞をたっぷり配置するという進化を選んだと考えられています。
その結果、色の鮮やかさは犠牲になったけれど、暗闇での視覚と動くものを見つける力は格段に高いという、ハンターに理想的な目が完成したのです。色の少なさは"欠陥"ではなく、生き方に合わせた最適化だったというわけですね。
暗闇で目が光るのは「タペタム」のおかげ
夜、車のライトや懐中電灯が愛犬・愛猫の目に当たったとき、目がキラリと緑や金色に光った経験はありませんか。これも、犬猫が夜目に強いことと深く関係しています。
犬や猫の網膜の後ろには、**タペタム(輝板/きばん)**と呼ばれる、鏡のように光を反射する層があります。目に入ってきたわずかな光を、このタペタムがもう一度網膜側へ跳ね返すことで、光を二度使って感度を高めているのです。暗い場所で目が光って見えるのは、このタペタムが反射した光が瞳から漏れ出ているためです。
さらに近年は、犬や猫が人間には見えない紫外線(UV)の領域まで見えている可能性を示す研究も出てきています。もし本当だとすれば、私たちには何も見えない場所に、犬や猫だけが感じ取っている"光の模様"があるのかもしれません。愛犬・愛猫が何もない空間をじっと見つめているとき、もしかしたら私たちの知らない世界を眺めているのかも……と考えると、少しロマンを感じますね。
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「色が見える/見えない」を踏まえたおもちゃ選びのコツ
この色覚の知識は、単なる雑学にとどまりません。愛犬・愛猫のおもちゃやグッズ選びに、そのまま活かせます。
ポイント1:青と黄色のおもちゃを選ぶ
犬猫がはっきり見分けられるのは青と黄色。この2色のおもちゃは、芝生や床の上でも背景から浮き上がって見えやすく、犬猫が"見つけやすい・追いやすい"のです。
- ドッグランで使うボール → 赤よりも青や黄色のボールがおすすめ
- 投げて遊ぶフリスビー → 黄色や青の犬用フライングディスク
「よく物を見失う」「投げても反応が薄い」と感じていた子でも、色を変えるだけで食いつきが良くなることがあります。
ポイント2:赤系のおもちゃは「動き」で補う
すでに持っているおもちゃが赤やオレンジでも、捨てる必要はありません。犬猫は色が見えにくくても、動くものを察知する力はとても優れているからです。地面に置きっぱなしより、転がす・跳ねさせる・引きずるといった動きを加えれば、色に頼らず十分に楽しめます。
- 猫の狩猟本能を刺激する猫じゃらし・じゃれ猫おもちゃは、色より"動き"が命
- 犬の知育トイ・引っ張り系おもちゃも、手で動かして誘えば夢中に
ポイント3:暗い時間のお散歩は"光る・反射する"グッズで安全に
犬猫は夜目が利くとはいえ、車のドライバーから愛犬が見えるかどうかは別問題です。薄暗い明け方や夜のお散歩では、飼い主側の安全対策としてLEDライト付きの首輪や反射材つきハーネスを使うと、事故防止に役立ちます。
猫が箱やおもちゃに入る・こもる行動が好きなことにも通じますが、犬猫は「見え方」に合わせた環境づくりで、ぐっと快適に過ごせるようになります。
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「見え方」で気になる変化があれば獣医師に相談を
ここまで紹介したのは、あくまで健康な犬猫の"正常な"色覚の話です。一方で、次のような様子が急に見られるようになった場合は、加齢や目の病気(白内障・進行性網膜萎縮など)が関係している可能性もあります。
- 慣れた家の中で物にぶつかるようになった
- 暗い場所を極端に怖がる、動きたがらなくなった
- 目が白く濁って見える、しきりに目を気にする
- 段差や階段でつまずくことが増えた
色覚は生まれ持った特性なので変化しませんが、視力そのものの低下はこうしたサインとして現れることがあります。気になる症状があるときは自己判断せず、早めに動物病院で獣医師に相談してください。早期発見が、愛犬・愛猫のQOL(生活の質)を守ることにつながります。
まとめ:愛犬・愛猫は「青と黄色」の世界を生きている
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 犬と猫は、青と黄色を中心とした二色型色覚の世界を見ている
- 人間には鮮やかな赤やオレンジ、緑は、犬猫にはくすんだ黄色〜灰色に映り、区別が苦手
- 色数が少ない代わりに、暗視力・動体視力に優れたハンターの目を持つ
- 目の奥のタペタムが光を反射し、暗闇でも目が光り、よく見える
- おもちゃは青・黄色を選ぶか、赤系なら動きを加えると食いつきUP
「うちの子、赤いおもちゃに興味ないな」と思っていたのは、決してわがままでも目が悪いわけでもなく、そもそも私たちとは違う色の世界を見ていたからだったのですね。愛犬・愛猫の"見ている世界"を想像しながら、青や黄色のおもちゃで一緒に遊んでみてください。きっと、いつもより夢中になって追いかけてくれるはずです。
出典・参考
- おおい動物病院「犬猫の色覚と視力の特徴」 https://oi-anihos.com/info/6576665
- 所沢アニマルメディカルセンター「犬と猫の視覚の秘密」 https://kirihara.jp/information/3600
- 現代ビジネス「犬や猫が識別しやすいのは『黄色と青』」 https://gendai.media/articles/-/85572
- McGill University Office for Science and Society「Are Cats and Dogs Colourblind?」 https://www.mcgill.ca/oss/article/you-asked/are-cats-and-dogs-colourblind
- VCA Animal Hospitals「Do Dogs See Color?」 https://vcahospitals.com/know-your-pet/do-dogs-see-color
- PetMD「What Colors Can Dogs See?」 https://www.petmd.com/dog/general-health/what-colors-can-dogs-see
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的としたものではありません。愛犬・愛猫の健康や目に気になる症状がある場合は、必ず獣医師にご相談ください。


