犬が穴を掘る本当の理由|庭・布団・ソファを掘る6つの本能と、叱らずにやめさせる工夫
犬が庭やソファ、布団を一心不乱に掘るのはなぜ?オオカミ時代の巣穴づくりから体温調節・退屈のサインまで、6つの理由を行動学の視点でやさしく解説。叱らずにやわらげる工夫も紹介します。

散歩中の花壇で急にザッザッと土を掘り始めたり、寝る前にベッドや布団を前足でせっせと掻いたり——。「なんでうちの子、こんなに掘るの?」と不思議に思ったことはありませんか。掃除が大変だったり、庭が穴だらけになったりで、つい「コラッ!」と言いたくなる行動です。
でも、犬の穴掘りはイタズラでも困らせようとしているわけでもなく、その多くが本能に根ざした自然な行動です。理由がわかると、頭ごなしに叱るより「なるほど、そういうことか」と受け止められるようになります。
この記事では、犬が穴を掘る6つの理由を行動学の視点からやさしく整理し、困った穴掘りをやわらげる工夫までまとめました。
結論:穴掘りの多くは「オオカミ時代の名残」
先に答えをお伝えすると、犬の穴掘りは大きく分けて次の3系統に整理できます。
- 本能由来(巣穴づくり・食料の保存・体温調節・狩り)
- 感情由来(退屈・ストレス・不安の発散)
- コミュニケーション由来(飼い主の気を引きたい・楽しい遊び)
つまり穴掘りは「悪いクセ」ではなく、犬にとってはごく自然な欲求の表れ。まずはその中身を一つずつ見ていきましょう。
犬が穴を掘る6つの理由
① 巣穴づくりの本能(オオカミの名残)
犬の祖先であるオオカミは、出産や休息のために地面を掘って巣穴(デン)を作っていました。土の中は外敵から身を守れて、気温も安定する安全な空間だったのです。
現代の犬がベッドや布団、ソファのクッションを前足で掻いてから丸くなるのは、この**「安全な寝床を整える」本能の名残**だと考えられています。掘っても穴は空きませんが、犬にとっては「ここを自分の落ち着ける場所にする」という大切な儀式なのです。
寝る前のこの行動は、丸まって寝る姿勢とも深く関係しています。犬の寝る姿勢に隠れた気持ちについては、こちらも参考にしてください。
▶ 関連記事: 犬の寝相が教えてくれる本当の気持ち|『へそ天』『丸まり寝』5パターンに隠された信頼度と健康サイン
② 大切なものを「隠す」キャッシング本能
野生時代、獲物を一度に食べきれないとき、犬の祖先は土に埋めて保存していました。これを**キャッシング(食料の貯蔵)**と呼びます。
現代の犬がおやつやお気に入りのおもちゃをくわえて庭の隅やソファの隙間に「埋めるしぐさ」をするのは、この名残です。掘って、隠して、鼻先でトントンと土をかぶせる——一連の動きがとても丁寧なのは、それだけ本能に深く刻まれている証拠。おやつを隠されて後で見つからず困る…というのはよくある光景です。
家の中でおやつを隠せる犬用ノーズワークマットを使うと、この「探して掘る」欲求を安全に満たしてあげられます。
③ 体温調節(夏のひんやり穴)
普段はあまり掘らない犬でも、夏になると地面を掘ろうとすることがあります。これは表面の乾いた土をどけて、下の湿ってひんやりした層を掘り出し、そこに体を寄せて涼もうとする行動です。
逆に寒い時期には、風をよける窪みを作って暖を取ることもあります。つまり穴掘りは、犬なりの天然のエアコンでもあるわけです。
夏場にこの行動が増えるようなら、暑さ対策のサインかもしれません。ペット用ひんやりマットや、庭遊びが好きな子には犬用プールを用意すると、掘らなくても涼める環境を整えてあげられます。夏バテのケア全般については、こちらの記事もあわせてどうぞ。
④ 狩猟本能(地中の獲物を追う)
土の中にはモグラやネズミ、昆虫などの小動物が潜んでいます。犬は優れた嗅覚でその気配を察知し、「捕まえたい!」という狩猟本能から夢中で掘り進めることがあります。
特にテリア系(ジャック・ラッセル・テリア、ミニチュア・シュナウザーなど)は、もともと地中の獲物を狩るために改良された犬種で、掘ることそのものが仕事だった歴史を持ちます。こうした犬種は穴掘り欲求が特に強い傾向があります。
⑤ 退屈・ストレスの発散
運動や遊びが足りず、エネルギーを持て余していると、犬は退屈しのぎに穴を掘ることがあります。掘るという行為は全身を使う運動であり、集中もするため、ストレス発散として選ばれやすい行動なのです。
留守番が長い、散歩が短い、一人遊びの時間が多い——こうした環境では穴掘りが激しくなりがち。この場合は「掘るのをやめさせる」より、根本にある退屈やストレスを解消してあげることが近道です。頭を使う犬用知育おもちゃを取り入れると、エネルギーの発散先を変えてあげられます。
退屈やストレスからくる問題行動は、噛み癖や破壊行動として現れることもあります。あわせてこちらもご覧ください。
▶ 関連記事: 犬の噛み癖・破壊行動の原因と止め方|子犬の甘噛みから成犬の物壊しまで完全ガイド
⑥ 飼い主の気を引きたい
「穴を掘ったら飼い主が飛んできた」——たとえ叱られる形であっても、犬にとっては注目してもらえた=かまってもらえたという成功体験になることがあります。
かまってほしいときに掘る、という学習が成立すると、退屈なときに「掘れば人が来る」とばかりに穴掘りを繰り返すようになります。この場合、掘っているときに大きく反応しないことも、実は対策のひとつになります。
穴掘りは犬種によって「熱量」が違う
同じ穴掘りでも、犬種によって欲求の強さはかなり異なります。
| 傾向 | 代表的な犬種 | 背景 |
|---|---|---|
| とても強い | ジャック・ラッセル・テリア、ミニチュア・シュナウザー、ダックスフンド | 地中の獲物を狩る作業犬として改良された |
| 強い | 柴犬、ビーグル、ハスキー系 | 狩猟・寒冷地での巣穴づくりの名残 |
| 穏やか | トイプードル、シーズーなど愛玩犬 | 掘る作業を目的に改良されていない |
もちろん個体差が大きいので、「うちの子はこの犬種だから掘って当たり前」と決めつける必要はありません。あくまで傾向として知っておくと、行動を理解しやすくなります。
「掘っちゃダメ」の前に知っておきたいこと
穴掘りをやめさせたくなったときに、まず押さえておきたいポイントがあります。
- 叱っても本能は消えない:頭ごなしに叱っても、掘りたい欲求そのものはなくなりません。むしろ隠れて掘るようになったり、別のストレス行動に移ったりすることも。
- 「なぜ掘っているか」を見極める:涼みたいのか、退屈なのか、狩りたいのか。理由によって対策がまったく変わります。
- 完全にゼロにしなくていい:掘ること自体は犬にとって健全な欲求発散でもあります。目指すのは「禁止」ではなく「掘っていい場所へ誘導する」ことです。
困った穴掘りをやわらげる4つの工夫
1. 「掘っていい場所」を用意する
庭の一角に砂場(ディグボックス)を作り、そこにおやつやおもちゃを浅く埋めてあげると、犬は喜んでそこを掘るようになります。「ここなら掘ってOK」という場所を作ってあげるのが、もっとも犬にやさしい解決策です。室内なら犬用の掘れるおもちゃ・ノーズワークトイで代用できます。
2. 運動量と刺激を増やす
散歩の時間や質を見直し、匂い嗅ぎをたっぷりさせる「嗅覚散歩」を取り入れましょう。頭と体を使って満足すると、退屈からくる穴掘りは自然と減っていきます。
3. 暑さ・寒さの環境を整える
夏に掘るなら涼しい居場所を、冬に掘るなら暖かい寝床を用意します。体温調節が目的の穴掘りは、環境を整えるだけでピタッとおさまることがあります。
4. 掘ってほしくない場所を「魅力のない場所」にする
よく掘る場所に石を置く、そこでは遊ばせない、といった工夫で「ここは掘る場所じゃない」と学習を促します。ただし犬が嫌がる強い忌避剤などは体調への影響も考え、使う場合は慎重に。
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こんな穴掘りは念のため獣医師に相談を
ほとんどの穴掘りは正常な行動ですが、次のようなケースは体や心のサインが隠れていることもあります。
- 今まで掘らなかった子が、急に激しく掘るようになった
- 掘りながら震えている・落ち着きがないなど不安の様子が強い
- 同じ場所を執拗に掘り続ける、爪や肉球を傷つけても止められない
- 皮膚をかきむしるような「自分の体を掘る」しぐさが増えた
こうした様子が続く場合は、痛み・かゆみ・不安障害などが背景にある可能性もあります。気になる症状があれば、自己判断せず早めに獣医師に相談してください。
穴掘りの前後に「くるくる回る」しぐさが見られる子も多いですが、この回転行動にも実は興味深い理由があります。
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穴掘りについてよくある質問
Q. 子犬のうちから掘るのは普通ですか? A. はい、珍しくありません。子犬は好奇心が旺盛で、地面の感触やにおいを確かめるように掘ることがあります。成長とともに落ち着く子も多いですが、テリア系など掘る欲求の強い犬種では大人になっても続くことがあります。掘っていい場所を早めに用意しておくと、困った場所での穴掘りを防ぎやすくなります。
Q. ソファや布団を掘るのもやめさせたほうがいい? A. 寝る前に軽く掻いて丸くなる程度であれば、寝床を整える本能的な行動なので無理にやめさせる必要はありません。ただし、生地を破いてしまう・誤飲の危険があるほど激しい場合は、犬用の丈夫なペットベッドに替える、掘ってよい毛布を別に用意するなどの工夫がおすすめです。
Q. 掘るのを叱ったら、隠れて掘るようになりました。 A. 叱ることで「人が見ていないときに掘る」と学習してしまった可能性があります。穴掘りは本能的な欲求なので、罰でゼロにするのは難しいものです。叱るのをやめ、「掘っていい場所」への誘導と、運動・遊びによる欲求発散に切り替えると、少しずつ困った穴掘りが減っていきます。
Q. 高齢になってから急に掘り出しました。心配です。 A. これまでしなかった行動が急に増えた場合は、不安の高まりや認知機能の変化、体の不調が隠れていることもあります。ほかの様子(夜鳴き・徘徊・食欲の変化など)もあわせて観察し、気になるようなら早めに獣医師に相談しましょう。
まとめ
犬が穴を掘るのは、決して困らせるためのイタズラではありません。
- 穴掘りの多くはオオカミ時代から受け継いだ本能(巣穴づくり・保存・体温調節・狩り)
- 退屈やストレス、かまってほしい気持ちからくることもある
- 犬種によって「掘りたい熱量」には大きな差がある
- 対策は「禁止」ではなく**「掘っていい場所へ誘導する」**のが基本
- 急に激しくなった・不安の様子が強い穴掘りは、念のため獣医師に相談を
理由がわかると、穴だらけの庭を見ても少し優しい気持ちになれるかもしれません。愛犬の「掘りたい」という本能を上手に満たしてあげて、お互いに気持ちよく暮らせる工夫を見つけていきましょう。
出典
- furbo「犬はなぜ穴を掘りたがるのか?」 https://furbo.com/blog/ja/article/whydogsdig
- ピースウィンズ・ジャパン wanko「犬が掘るのはなぜ?本能・心理・行動の意味を解説【獣医師監修】」 https://wanko.peace-winds.org/journal/44537
- petlives「犬が『穴掘り』をするのはなぜ?6つの理由を行動学の専門獣医師が解説」 https://petlives.jp/love-dog/15623
- 日本ペットシッターサービス「犬が穴掘りをする理由とは?気を付けたい穴掘りも解説」 https://www.pet-ss.com/blog/48278/
※本記事は一般的な行動学の情報をまとめたものであり、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状がある場合は獣医師にご相談ください。


