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豆知識2026/5/17

愛犬のあくびに隠れたSOS|カーミングシグナル理論と東大研究が解き明かす『犬語』の正体

犬のあくびは『眠いから』だけではありません。ノルウェーの動物学者ルーガスが提唱したカーミングシグナル理論と、東京大学の『うつるあくび』研究を踏まえ、愛犬が伝えようとしているストレスサインの読み方と、飼い主が今日からできる対策をまとめました。

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愛犬のあくびに隠れたSOS|カーミングシグナル理論と東大研究が解き明かす『犬語』の正体

抱っこした瞬間、ブラッシングを始めた途端、見知らぬ人に近づかれたとき──愛犬が「ふぁ〜っ」と大きなあくびをするのを見て、「眠いのかな?」と思ったことはありませんか。

実はその一見のんびりした仕草、犬から飼い主への大事なメッセージである可能性が高いのです。動物行動学の世界では、犬のあくびは 「カーミングシグナル(Calming Signal)」 と呼ばれる “犬語” のひとつとして扱われており、「自分自身や相手を落ち着かせたい」「いまの状況はちょっと苦手」というSOSのサインとして使われていることが、近年の研究で次々と明らかになっています。

さらに2013年、東京大学の研究チームは 「人と犬の絆が強いほど、飼い主のあくびがうつりやすい」 ことを科学的に証明しました。私たちが家族や恋人のあくびにつられてしまうのと同じ現象が、犬と人間のあいだにも起きていたのです。

この記事では、ノルウェーの動物学者テゥーリッド・ルーガス氏が提唱したカーミングシグナル理論の基本から、東大研究が明らかにした共感としてのあくび、ストレスサインの見分け方、そして飼い主が今日からできる対策まで、最新の知見をまとめてご紹介します。


結論:犬のあくびには「3つの意味」がある

先に答えを言ってしまうと、犬のあくびは大きく次の3パターンに分類できます。

  • 生理的なあくび:人間と同じく眠い・起き抜け・退屈なときに出る
  • カーミングシグナルとしてのあくび:不安・緊張・葛藤を感じたとき、自分と相手を落ち着かせるために出す “犬語”
  • 共感性のあくび(うつりあくび):信頼している相手(特に飼い主)のあくびにつられて出る、社会的な絆のサイン

つまり、「あくび=眠い」と単純に決めつけてしまうと、愛犬が必死で伝えようとしているメッセージを見逃してしまう可能性があるということです。

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カーミングシグナルとは?ノルウェー発の “犬語” 理論

提唱者はカリスマドッグトレーナー、テゥーリッド・ルーガス

カーミングシグナルという概念を世界に広めたのは、ノルウェーのドッグトレーナーであり動物学者でもある テゥーリッド・ルーガス(Turid Rugaas) 氏です。1990年代に発表された著書『On Talking Terms With Dogs: Calming Signals』は世界中で翻訳され、現代のドッグトレーニングの教科書のひとつになっています。

ルーガス氏は、何千頭もの犬を観察するなかで、犬たちが争いを避け、相手や自分を落ち着かせるために、ごく日常的な仕草を「合図」として使っていることに気づきました。その代表例が、あくび・視線そらし・体を振る(シェイクオフ)・体を反らす・地面のニオイを嗅ぐ、といった動作です。

犬が「平和主義者」であることの証拠

カーミングシグナルは、犬という動物が本来 争いを好まない平和主義者 であることを示す行動です。野生のオオカミの群れでも、無用な衝突を避けるための合図は重要なコミュニケーションでした。家庭犬になっても、犬は同じ仕組みを人間との関係に応用しているのです。

ルーガス氏は「同じカーミングシグナルでも、状況によって意味が異なる」と強調しています。あくびひとつとっても、出る場面と前後の文脈をセットで観察することが、犬の気持ちを正しく読み解くうえで欠かせません。


東京大学が証明した「うつるあくび」と人犬の絆

犬は飼い主のあくびに “つられる”

2013年、東京大学の研究チーム(テレサ・ロメロ氏ら)は、 犬が飼い主のあくびに伝染されることを科学的に証明 した論文を国際科学誌『PLOS ONE』に発表し、世界的に大きな話題になりました。

実験では、25頭の家庭犬を対象に、飼い主と見知らぬ人それぞれが目の前であくびをするシーンを観察。すると、飼い主のあくびを見たときの方が、犬があくびを返す確率が有意に高かった のです。さらに、心拍数の変化を測ったところ、ストレスによるあくびではなく、共感が原因であることも示唆されました。

あくびがうつるのは「心を持つ動物」の証

ヒト同士であくびがうつる現象は、長らく「共感性(エンパシー)」と関連づけて研究されてきました。チンパンジーやボノボでもうつりあくびが確認されており、 社会的な絆や情動の共有を可能にする高度な認知能力 の表れと考えられています。

東大研究の意義は、 犬がヒトと同じ仕組みで “共感” をしている可能性 を示したことです。「あくびが多い愛犬は単に眠いのではなく、もしかしたら飼い主の状態に深く寄り添っているのかもしれない」──そんな視点で観察すると、毎日のスキンシップが少しだけ豊かになるはずです。

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ストレスサインとしてのあくび:見分けるべき5つの場面

ここからが本題です。 生理的なあくび・うつりあくび と、 カーミングシグナルとしてのストレスあくび を見分けるには、 「いつ出たか」 が最大のヒントになります。次のような場面でのあくびは、ストレスサインである可能性が高いとされています。

① 抱っこ・撫でられている最中のあくび

「うちの子、ハグするとあくびするんです」という飼い主さんは多いのですが、これは 「ちょっと束縛がきつい」「いまは構わないでほしい」 というやんわりとした拒否のサインのことがあります。

抱っこが好きな犬ばかりではありません。特に小型犬は、抱き上げられた瞬間に強い不安を感じる個体が少なくないことも知られています。あくびが出たら、いったん解放してあげるのが信頼関係を保つコツです。

② 叱られている最中のあくび

「悪さをした愛犬を叱っていたら、あくびをして反省していないように見える」──これも誤解されがちなシーンです。

叱責によって犬が 強いストレスや葛藤を感じ、それを和らげようと無意識に出している カーミングシグナルです。決して舐めた態度ではなく、むしろ「これ以上怖い声を出さないで」というお願いに近いものとされています。

③ 動物病院での待ち時間

待合室で他の犬や独特のニオイ、緊張した飼い主の雰囲気に囲まれると、多くの犬が頻繁にあくびをします。これは典型的なストレスあくびです。

リラックスできるよう、 冷感マットやお気に入りのブランケットを持参 したり、抱っこできるサイズの犬なら膝の上で待つなどの工夫が役立ちます。冷感マットや待合での落ち着き用ブランケットは ペット用 冷感マット犬 ブランケット 安心 で多数販売されています。

④ 知らない人や犬に近づかれたとき

散歩中に他の犬と挨拶するシーンや、見知らぬ人が「かわいい〜」と顔を近づけてきたとき、愛犬が大きなあくびをしたら 「ちょっと距離をとってほしい」 という合図です。

ここで無理に挨拶を続けさせると、犬同士のトラブルや咬傷事故につながる可能性があります。あくびに気づいたら、リードを短く持ってその場を離れる判断ができる飼い主は、犬から見ても「頼れるリーダー」です。

⑤ トレーニング中の連続あくび

しつけや芸の練習をしているときに、 何度もあくびを繰り返す 場合は要注意。 「今のレッスンは難しすぎる」「集中力の限界」 というサインです。

ドッグトレーナーの間では、5回以上連続であくびが出たらレッスンを中断する、というのが一つの目安として知られています。短時間で切り上げ、ご褒美と褒め言葉で気持ちよく終わらせることが、長期的な学習効果を高めます。


「眠い」と「ストレス」を見分ける3つのチェックポイント

それでも、目の前の愛犬のあくびがどちらなのか迷うことはあります。次の3点を観察すると、見極めやすくなります。

チェックポイント 生理的あくび ストレスあくび
出るタイミング 起き抜け・退屈時 抱っこ中・叱責時・病院・知らない人の前など
頻度 1〜2回でおさまる 数分間に何度も繰り返す
同時に出る仕草 ストレッチ・伸び 視線そらし・口元を舐める・体を低くする・しっぽを下げる

特に 「あくび+他のカーミングシグナル」 がセットで出ているときは、ほぼ間違いなくストレス由来です。視線そらし、しきりに口元を舐める仕草、急に地面のニオイを嗅ぎ始める、体を激しく振るなどが同時に観察されたら、愛犬は今、何らかの不快感を抱えています。

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ストレスあくびが頻発するときに飼い主ができること

愛犬のあくびが「眠い」では説明できないほど頻発しているとき、まず取り組みたい対策をまとめます。

① 環境ストレスを棚卸しする

  • 引っ越し・模様替えなど住環境の変化
  • 家族構成の変化(赤ちゃんの誕生、留守番時間の急増)
  • 工事音・花火・雷など慢性的な騒音
  • ケージや寝床の位置(人の出入りが激しい場所だと落ち着けない)

こうした要因がひとつでも当てはまる場合、まずは 静かで安心できる “パーソナル空間” を1つ用意してあげるだけでも、ストレスあくびは目に見えて減ります。専用クレートや囲い付きベッドは 犬 クレート 落ち着く犬 ベッド ドーム型 で多くの選択肢が見つかります。

② 知育玩具で「考える時間」を作る

留守番中や夕方の手持ち無沙汰な時間に、 コングやノーズワークマット を使った嗅覚活動を取り入れると、犬は満足感を得やすくなります。フードやおやつを隠して探させるだけのシンプルな遊びでも、 散歩30分以上に匹敵する精神的疲労 が得られると言われています。

具体的な商品は 犬 ノーズワークマット犬 知育玩具 コング などで探せます。

③ 食事面からのサポート

ストレスを感じやすい犬は、 腸内環境の乱れや食欲不振 を起こしやすい傾向があります。消化に優しく、嗜好性が高いフードに切り替えることで、食事の時間そのものを「楽しい時間」に戻してあげるアプローチもケアに役立つ可能性があります。

たとえば、高タンパクで人工添加物を抑えたグレインフリーフードは、ストレスで食欲が落ち気味な犬にも食いつきが良いことで知られています。

  • モグワン:チキン&サーモンの香りで嗜好性が高く、人工保存料・着色料不使用 → モグワン公式
  • カナガン:英国王室御用達ブランドのグレインフリーフード → カナガン公式

なお、フードの切り替えは1〜2週間かけて少しずつ行うのが基本です。詳しい移行方法は別記事にまとめています。

④ 飼い主自身がリラックスする

意外と見落とされがちですが、 飼い主のイライラや緊張は、想像以上に犬に伝わっています。前述の東大研究が示すように、犬は飼い主の感情を読み取って共感する能力を持っています。

帰宅後にスマホを置いて5分間だけ深呼吸する、寝る前に愛犬を撫でながら一緒にゆっくり過ごす──そんなささやかな習慣が、愛犬のあくびの回数を減らす近道になることがあります。


体調不良のサインかもしれないあくび:受診の目安

ここまでは「行動上のあくび」を中心に解説してきましたが、 あくびが医学的なサインである可能性 も忘れてはいけません。次のような場合は、早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。

  • 食事中・食後にあくびを繰り返す:歯周病・口内炎・歯の破折など口腔内のトラブルが疑われる
  • あくびのたびに口を半開きにしたまま にする・口臭が急に強くなった
  • 頻繁にあくびをしながらフラフラする・元気がない:循環器・神経系の不調の可能性
  • シニア犬になってから急にあくびが増えた:認知機能の変化(CDS)が背景にあることも
  • あくびと同時に嘔吐や食欲不振 が見られる

特に口の中のトラブルは、犬自身が痛みを言葉にできないぶん、 「あくびがしづらそう」「口を開けるのを嫌がる」 という微妙な変化が唯一のサインになることもあります。デンタルケアの習慣がない場合は、 犬 歯磨きシート などで毎日のケアを始めると、口腔内の状態変化に気づきやすくなります。

繰り返しになりますが、 「いつもと違うあくび」が気になった場合は、必ず獣医師に相談する ようにしてください。本記事はあくまで一般的な行動学・科学情報の紹介であり、診断や治療を意図するものではありません。


まとめ:あくびは “犬語” の入門編

最後にポイントを整理します。

  • 犬のあくびには「生理的」「カーミングシグナル」「うつりあくび(共感)」の3パターンがある
  • カーミングシグナルとしてのあくびは、ノルウェーの動物学者ルーガスが提唱した “犬語” のひとつ
  • 東京大学の研究で、犬は飼い主のあくびに伝染することが証明されており、社会的な絆の表れと考えられている
  • 抱っこ中・叱責中・病院・知らない人の前・トレーニング中のあくびは、ストレスのサインである可能性が高い
  • 視線そらし・口元舐め・体を低くするなどのシグナルと セットで出ているとき は要注意
  • 環境調整・知育玩具・食事サポート・飼い主自身のリラックスが、頻発するストレスあくびを減らすカギ
  • 食後・口腔トラブル・シニア期の急増など、 医学的サインの可能性がある場合は獣医師に相談 すること

愛犬のあくびを「眠いだけ」と片付けず、 「いま、何を伝えようとしているのかな?」 という視点で観察してみてください。きっと、これまで気づかなかった愛犬の表情や仕草が見えてくるはずです。 “犬語” が読めるようになることは、飼い主にとって最高のスキルのひとつです。


出典・参考文献

  • いぬのきもちWEB MAGAZINE「【獣医師監修】犬があくびする理由は? 気を付けたいあくびの見分け方」 https://dog.benesse.ne.jp/withdog/content/?id=17326
  • 子犬のへや「【犬のカーミングシグナル】あくびをするときの意味」 https://www.koinuno-heya.com/calming/yawning.html
  • 一般社団法人 盲導犬総合支援センター「とっても大切なカーミングシグナル、犬のあくび!」 https://goguidedogs.jp/column/dog_yawning
  • 国分寺ハートアニマルクリニック「犬のあくびや視線そらしには意味がある?『カーミングシグナル』でわかる愛犬の気持ち」 https://kokubunjiheartanimal.com/blog/
  • All About「犬のあくびの意味の見分け方…抱っこ時やなでられた時の意味は?」 https://allabout.co.jp/gm/gc/471832/
  • Romero T, et al. (2013) "Familiarity Bias and Physiological Responses in Contagious Yawning by Dogs Support Link to Empathy." PLOS ONE.
  • Turid Rugaas (1997) On Talking Terms With Dogs: Calming Signals. Dogwise Publishing.

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