犬・猫が夏に水を飲まない…脱水を防ぐ8つの対策|必要な水分量と危険なサインの見分け方
気温が上がる夏、『うちの子が最近あまり水を飲まない』という相談が増えます。犬・猫が夏に水を飲まなくなる原因、1日に必要な水分量の目安、脱水のセルフチェック法、飲水量を無理なく増やす8つの工夫、そして受診が必要なサインまで、獣医学情報をもとにやさしく整理しました。

「猛暑が続いているのに、うちの子は水をあまり飲んでいない気がする」——梅雨が明けて気温が上がってくると、動物病院やペット相談窓口には、こうした「飲水量」に関する不安の声が一気に増えてきます。ごはんを食べない悩みは気づきやすい一方で、水を飲まないことは見過ごされがちです。しかし、夏の脱水は熱中症・膀胱炎・腎臓トラブルの入り口になりうる、静かで見えにくいリスクです。
同じ悩みを抱えている飼い主さんは、決して少なくありません。特に日本の夏は高温に多湿が重なり、体に熱がこもりやすい環境です。人間なら「のどが渇いた」と自分でこまめに水を飲めますが、犬や猫は自分の判断で十分な量を飲めているとは限りません。
この記事では、犬・猫が夏に水を飲まなくなる主な原因、1日に必要な水分量の目安、脱水を見抜くセルフチェック法、飲水量を無理なく増やす8つの具体策、そして「これは受診が必要」というサインまで、順番に整理していきます。まずは結論から見ていきましょう。
結論:夏は「飲ませ方の工夫」で飲水量を底上げする
先に大事なポイントをまとめます。
- 犬・猫が夏に水を飲まないのは、暑さによる食欲・活動量の低下、水の温度やニオイ、置き場所への不満など複数の要因が重なっていることが多い
- 水を飲む量が減ると、真っ先に心配なのが脱水。放置すると熱中症や泌尿器トラブルにつながる可能性がある
- 対策の基本は「無理やり飲ませる」ことではなく、自然に飲みたくなる環境を整えること。器の数・置き場所・水温・フードの工夫で、飲水量は底上げできる
- ぐったりする・おしっこが極端に減る・嘔吐が続くなどのサインがあれば、様子見をせず早めに動物病院へ
「水を飲まない」と一言でいっても、原因はさまざまです。まずは、なぜ夏に飲水量が落ちるのかを理解するところから始めましょう。
なぜ夏に水を飲まなくなるの?5つの主な原因
1. 暑さで食欲・活動量が落ちている
犬や猫は、ごはんを食べることや体を動かすこととセットで水を飲む場面が多い動物です。夏バテ気味で食が細くなったり、暑さで散歩や遊びの時間が減ったりすると、それに連動して自然に飲む「きっかけ」そのものが減ってしまいます。ドライフード中心の子は特に、食事量が落ちると水分摂取も一緒に落ち込みやすい傾向があります。
2. 水がぬるい・古い・ニオイが気になる
置きっぱなしの水は、夏場はすぐにぬるくなり、ホコリや被毛が浮いたり、ヌメリが出たりします。犬も猫も、新鮮で清潔な水を好む繊細さを持っています。水道水のカルキ臭や、器に残ったフードのニオイが気になって口をつけない、というケースも珍しくありません。
3. 器の置き場所・素材が気に入らない
特に猫はデリケートで、フードボウルのすぐ隣に水の器があると飲まないことがよくあります。トイレの近くや、人の往来が多い落ち着かない場所も敬遠されがちです。ひげが器のふちに当たるのを嫌う「ウィスカーストレス」で、深い器を避ける子もいます。
4. もともと猫は「あまり水を飲まない」動物
猫の祖先は乾燥地帯で暮らしていたため、少ない水分で生きられるよう体が作られており、のどの渇きを感じにくいといわれています。そのため、もともと積極的に水を飲む習慣が薄く、夏は特に脱水に傾きやすい動物です。猫が慢性的な泌尿器・腎臓トラブルを起こしやすい背景にも、この「水を飲まない体質」が関係していると考えられています。
5. 体調不良・病気が隠れていることも
飲水量の変化の裏に、口内炎で口が痛い、発熱している、あるいは吐き気があるといった不調が隠れていることもあります。逆に、**急に水をがぶ飲みするようになった「多飲」**は、腎臓病や糖尿病などのサインである場合もあり、注意が必要です。「飲まない」だけでなく「飲みすぎ」も、いつもと違えば気に留めておきましょう。
夏の不調というと熱中症が思い浮かびますが、危険なサインの見分け方については「犬のハァハァが止まらない|危険なパンティングの見分け方と家庭でできる応急対処」も参考になります。
1日にどれくらい飲めばいいの?水分量の目安
「そもそも、どのくらい飲めば足りているの?」という疑問はとても大切です。犬・猫が1日に必要とする水分量は、体重によって変わります。一般的な目安として、健康な成犬・成猫では次のように考えられています。
| 体重 | 1日に必要な水分量の目安 |
|---|---|
| 2kg | 約100〜160ml |
| 4kg | 約180〜260ml |
| 6kg | 約250〜350ml |
| 10kg | 約370〜530ml |
| 20kg | 約620〜900ml |
※あくまで目安です。運動量・気温・食事内容(ウェットフードかドライか)で大きく変わります。
ここで注意したいのは、この量は**「飲み水」だけでなく、食事に含まれる水分も合わせた総量だという点です。ウェットフードは約70〜80%が水分ですが、ドライフードは10%前後しか水分を含みません。つまりドライフード中心の子ほど、飲み水でしっかり補う必要がある**ということです。
毎日ぴったり計るのは難しいので、「いつもの給水ボトルが夕方までにどれくらい減っているか」をざっくり把握しておくと、変化に気づきやすくなります。犬が水を飲むときの体の仕組みそのものに興味がある方は、「犬が水を飲むとき何が起きている?ハーバード大学が解明した『舌の水柱』の物理学」もあわせてどうぞ。
脱水のセルフチェック|家庭でできる3つの確認方法
飲水量が減っているとき、体が脱水に傾いていないかを家庭で簡単に確認する方法があります。異変を感じたら、次の3つをチェックしてみてください。
① 皮膚の弾力テスト(ツルゴール) 首の後ろや肩甲骨のあたりの皮膚をやさしくつまんで持ち上げ、パッと離します。健康な状態ならすぐに元に戻りますが、脱水していると戻りが遅く、テント状に残ることがあります。
② 歯ぐきの湿り気 指で歯ぐきにそっと触れてみます。しっとり湿っていれば安心ですが、乾いてネバつく感じがあれば水分不足のサインかもしれません。
③ おしっこの量・色 トイレの回数が極端に減っていないか、色がいつもより濃い黄色になっていないかを確認します。おしっこが濃く少ないのは、体が水分を節約しているサインです。
これらはあくまで簡易チェックで、診断ではありません。少しでも「おかしいな」と感じたら、後述する受診の目安も参考にしてください。
飲水量を無理なく増やす8つの工夫
ここからは実践編です。ポイントは「無理やり飲ませない」こと。自然に飲みたくなる環境を整えていきましょう。
1. 水の器を家の複数か所に置く
リビング、寝室、廊下など、生活動線のあちこちに水飲み場を増やすのが最も効果的な工夫のひとつです。「わざわざ飲みに行く」のではなく「通りがかりに飲める」状態を作ると、飲水量は自然に増えます。特に多頭飼いや、活動範囲が広い家では効果的です。
2. こまめに新鮮な水に取り替える
1日1回ではなく、朝・夕など最低でも2回は新鮮な水に交換しましょう。器も毎回さっと洗ってヌメリを取り除きます。清潔でひんやりした水は、それだけで飲む気を後押しします。
3. 器の素材と形を見直す
プラスチックは傷にニオイや雑菌がつきやすいため、陶器やステンレス製の器がおすすめです。猫にはひげが当たりにくい、口の広い浅めの器が好まれます。いくつか試して、その子の好みを探ってみましょう。
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4. 循環式給水器(ウォーターファウンテン)を使う
流れる水に興味を示す子は多く、循環式の自動給水器にすると飲水量が増えることがあります。フィルターで水を清潔に保てるのも利点です。蛇口の水を飲みたがる猫には特に相性が良い選択肢です。
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自動給水器は種類が多く選ぶのが難しいので、猫向けの選び方は「猫の自動給餌器の選び方完全ガイド」の考え方(電源・お手入れのしやすさ・多頭対応)も応用できます。
5. 水温を「常温〜少しひんやり」に調整する
キンキンに冷えすぎた水はお腹を冷やす原因になることもあります。基本は常温、暑い日は少しだけひんやりする程度がちょうど良いバランスです。氷を1〜2個浮かべると、冷たさと「動くもの」への興味で飲んでくれる子もいます。
6. ウェットフードやふやかしで食事から水分を補う
飲み水で足りない分は、食事から水分を摂らせるのが有効です。ウェットフードを取り入れたり、いつものドライフードをぬるま湯で軽くふやかしたりするだけでも、総水分量はぐっと増えます。ふやかすとニオイが立って食いつきが良くなる副次効果も期待できます。
食が細い子には、香りが良く水分と一緒に摂りやすいフードを選ぶのもひとつの方法です。ドライフードならモグワン(犬用)やモグニャン(猫用)のように香りが強めのフードは、ぬるま湯でふやかすと食いつきをサポートしやすい選択肢です。
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7. スープ・ペット用経口補水を活用する
食欲が落ちているときは、無添加のペット用スープや、犬猫用の経口補水ゼリーなどで水分と一緒に嗜好性を足すのも手です。手作りするなら、味付けなしでゆでた鶏ささみのゆで汁(冷ましたもの)を少量水に混ぜると、香りで飲む気を引き出せます。人間用のスポーツドリンクは糖分・塩分が犬猫には過剰なので避けましょう。
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8. 涼しく落ち着ける環境を整える
そもそも室温が高すぎると、犬も猫もぐったりして水を飲む元気すら失われます。エアコンで室温を26〜28℃前後に保ち、冷感マットなどで体温がこもらない場所を作ってあげましょう。快適に過ごせれば食欲も戻り、飲水も自然に増えていきます。
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留守番中の室温管理に迷う方は、「犬の夏のお留守番、エアコンは何度?電気代と熱中症リスクを両立させる設定ガイド」で具体的な設定温度と電気代の考え方を紹介しています。
こんなときは動物病院へ|受診を判断するサイン
「飲まない」の裏に病気が隠れていることもあります。以下のようなサインが見られたら、様子見をせず早めに動物病院へ相談してください。
- ぐったりして反応が鈍い、立ち上がれない
- 半日〜1日以上、水も食べ物もほとんど口にしない
- 嘔吐や下痢を繰り返している
- おしっこがほとんど出ていない、または逆に急に量・回数が増えた
- 歯ぐきが乾いて白っぽい、皮膚の弾力テストで戻りが明らかに遅い
- ハアハアという荒い呼吸が続く、体が熱い(熱中症の疑い)
特に、まったく水を飲まない・尿が出ない状態は緊急性が高いことがあります。「気になる症状があれば、自己判断せず獣医師に相談する」——これが何より安全な選択です。夏の暑さレベルを事前に把握しておきたい方は、「犬と猫の『熱中症週間予報』が配信中|4段階アラートの読み方」もチェックしておくと備えになります。
まとめ|「飲みたくなる環境」で夏の脱水を防ごう
犬や猫が夏に水を飲まなくなるのは、暑さによる食欲・活動量の低下、水の鮮度や温度、器の置き場所など、いくつもの要因が重なった結果です。そして飲水量の低下は、熱中症や泌尿器トラブルにつながりうる、静かなリスクでもあります。
大切なのは、無理やり飲ませることではなく、水飲み場を増やす・新鮮に保つ・器を見直す・食事から水分を足す・涼しく整えるといった小さな工夫の積み重ねで、「自然に飲みたくなる環境」を作ってあげることです。今日ご紹介した8つの対策のうち、まずは1〜2個から試してみてください。
そして、ぐったりする・尿が極端に減る・嘔吐が続くといったサインがあれば、迷わず動物病院へ。愛犬・愛猫が水分をしっかり摂れる環境で、この夏を元気に乗り切れますように。
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出典・参考
- 日本動物愛護協会「熱中症について」 https://jspca.or.jp/necchusho/about/about06.html
- アース・ペット株式会社「夏の脱水症状に注意 犬と猫に水を飲ませるためにはどうすればいい?」 https://www.earth-pet.co.jp/advice/advice200801
- 光が丘動物病院グループ「犬と猫の夏バテ予防|暑さに負けない体調管理と食欲不振対策」 https://www.hikarigaoka.net/dog-cat-summer-fatigue
- イオンペット ペテモ「犬の暑さ対策は何が正解?」 https://www.aeonpet.com/topics/pet-column_80.html
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。


