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豆知識2026/7/30

犬や猫は夢を見る?寝ているときにピクピク動く・寝言を言う理由|MITとスタンレー・コレンが解き明かした『レム睡眠と記憶の再生』の科学

眠っている愛犬や愛猫が足をピクピク動かしたり、小さく鳴いたり…。あれは夢を見ているのでしょうか?MITのラット研究やスタンレー・コレン博士の実験をもとに、動物が夢を見る科学的根拠と、寝ているときに動く理由、飼い主が気をつけたい睡眠のサインをやさしく解説します。

睡眠レム睡眠雑学
犬や猫は夢を見る?寝ているときにピクピク動く・寝言を言う理由|MITとスタンレー・コレンが解き明かした『レム睡眠と記憶の再生』の科学

すやすや眠っていたはずの愛犬が、突然足を「タタタッ」と動かしはじめた。愛猫のヒゲや口元が小刻みにピクピク震え、小さく「ウニャ…」と寝言のような声を出す——。ペットと暮らす人なら、一度は「今、夢を見ているのかな?」と微笑ましく思ったことがあるはずです。

結論から言うと、犬や猫は夢を見ている可能性が非常に高い ことが、複数の科学研究から示されています。しかもその夢の“内容”まで、実験によってかなり具体的に推測されているのです。

この記事では、MIT(マサチューセッツ工科大学)のラット実験や、犬の認知研究で有名なスタンレー・コレン博士の実験を軸に、なぜ犬や猫は寝ているときにピクピク動くのかどんな夢を見ているのか、そして 飼い主が知っておきたい睡眠中のサインと注意点 まで、最新の知見をふまえてやさしく解説します。

結論:犬も猫も「レム睡眠」があり、夢を見ていると考えられる

私たち人間の睡眠には、浅い眠りの「レム睡眠(REM sleep)」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」があります。夢を鮮明に見ているのは、主にレム睡眠のときだと考えられています。レム(REM)とは Rapid Eye Movement=「急速眼球運動」の略で、まぶたの下で眼球がキョロキョロ動くのが特徴です。

そして重要なのは、犬や猫にもこのレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが存在する という点です。大脳が発達した哺乳類は、人間とよく似た睡眠構造を持っています。とくに犬は、脳の構造や睡眠中の脳波のパターンが人間と非常に似ていることがわかっており、「人間が夢を見るのなら、犬も見ていると考えるのが自然だ」というのが研究者の共通見解になっています。

つまり、寝ているペットが見せる「足の動き」「口元のピクつき」「小さな寝言」は、レム睡眠中に夢を見ているサイン と考えられるのです。

犬や猫が寝ているときにピクピク動く3つの理由

「夢を見ているから」という一言で片づける前に、体の中で何が起きているのかをもう少し丁寧に見てみましょう。寝ているペットが動く背景には、大きく3つの仕組みがあります。

1. レム睡眠中に脳が“昼間の体験”を再生している

レム睡眠中、脳は起きているときとほとんど変わらないほど活発に活動しています。日中に経験したこと——ボール遊び、散歩、飼い主とのふれあい、窓の外の鳥——といった記憶を、脳が睡眠中に“再生”していると考えられています。

その再生に合わせて、走る・追いかける・噛むといった動きの指令が体に一部漏れ出し、足がピクピク動いたり、口をモグモグさせたりするのです。まさに「夢の中で走っている」状態と言えます。

2. 「筋肉のブレーキ役」が完全ではない

本来、レム睡眠中は脳幹にある 橋(きょう/pons) という部分が働いて、大きな筋肉を一時的に麻痺させ、夢の内容どおりに体が暴れないようブレーキをかけています。私たち人間が夢の中で走っても、実際にベッドから飛び出さないのはこの仕組みのおかげです。

ただし、このブレーキは完全ではありません。とくに手足の先や顔の細かい筋肉には抑制が及びにくく、その結果として 足先のピクつき・ヒゲの震え・目元や口元の小さな動き が表に出てくるのです。

3. 子犬・子猫と老犬・老猫は特に動きやすい

面白いことに、寝ているときの動きは年齢によって差が出ます。子犬や子猫、そしてシニアのペットは、若い成犬・成猫よりも寝ているときによく動く 傾向があると言われています。

子犬・子猫の場合は、脳の“筋肉のブレーキ機能”がまだ発達途中のため。シニアの場合は、加齢によってその抑制機能が少しゆるむためと考えられています。つまり「よく動く=異常」ではなく、多くはごく自然な現象なのです。

科学が明かした「ペットは何の夢を見ているのか」

「夢を見ている」ことは分かっても、「何の夢を見ているか」まで分かるのでしょうか。ここが、この分野の研究のいちばん面白いところです。

MITのラット実験:迷路の夢を“脳波から特定”した

2001年、MITの研究チームは、日中に迷路を走る訓練をしたラットの脳活動を記録しました。すると、ラットがレム睡眠に入っているとき、起きて迷路を走っていたときとそっくりの脳活動パターン が現れたのです。

さらに驚くべきことに、その脳活動の“信号のかたち”を読み解くことで、研究者は「今このラットは、迷路のどのあたりを走っている夢を見ているか」まで推測できたと報告しています。動物が、日中の経験を睡眠中に再生している——つまり夢を見ていることを示す、非常に有名な研究です。

スタンレー・コレン博士の実験:犬種ごとに“らしい夢”を見る

犬の認知研究で知られるスタンレー・コレン博士は、過去の研究を紹介しながら、犬の夢についてさらに具体的な話をしています。

かつての実験では、レム睡眠中に筋肉のブレーキ役である「橋(pons)」の働きを一時的に抑えたところ、眠っている犬が夢の内容どおりに体を動かし始めたと言います。しかもその動きには、犬種ごとの“らしさ” が表れました。

  • レトリバー(回収犬)は、夢の中の鳥をくわえて運ぶような動きをした
  • ポインター(獲物を指し示す犬)は、見えない獲物に向かってポーズを取った
  • 番犬タイプの犬は、夢の中の侵入者に反応するような動きをした

つまり犬は、自分が日中にしている“その犬らしい活動”を夢に見ている 可能性が高い、というわけです。愛犬がボール遊びが大好きなら、きっと夢の中でもボールを追いかけているのかもしれません。

猫は「狩り」の夢を見ている?

猫についても、古くから同様の研究があります。レム睡眠中の筋肉抑制を外した猫は、眠ったまま獲物を追いかける、飛びかかる、身をかがめて待ち伏せする、といった 狩りそのもののような行動 を見せたと報告されています。

猫がレム睡眠に入ると、ヒゲがピクピク動き、前足がヒクヒクと震え、「クククッ」という小さな声(クラッキングに似た音)を出すことがあります。これはまさに、夢の中で獲物を狙っているサインなのかもしれません。窓辺で鳥を見て「カカカッ」と鳴く行動と、夢の中の狩りがつながっていると考えると、なんともロマンがあります。

犬や猫はどれくらい眠り、どれくらい夢を見る?

夢の話を理解するうえで、そもそもペットがどれだけ眠っているかを知っておくと納得感が増します。

対象 1日の睡眠時間の目安 レム睡眠の特徴
成犬 12〜14時間ほど 眠り全体に占めるレム睡眠の割合は人間より少なめ。そのぶん夢の“出番”も細切れ
子犬 18〜20時間ほど 睡眠時間が長く、脳が急成長中。よく動き、よく寝言を言う
成猫 12〜16時間ほど 一度の眠りは短いが、1日に何度もレム睡眠のサイクルを繰り返す
子猫 20時間前後 ほとんど寝て過ごす。ピクピク・寝言が特に多い

人間は眠り全体の20〜25%ほどがレム睡眠と言われますが、犬や猫はもう少し割合が低いとされます。ただし猫は「短い眠りを何度も取る」性質があるため、レム睡眠に入る回数自体は多く、それだけ夢を見るチャンスも多いと考えられます。

日中の眠り方には、そのコの気持ちや体調が表れることも。眠るときの姿勢から気持ちを読み解くヒントは、こちらの記事でくわしく紹介しています。

▶ 関連記事: 犬の寝相が教えてくれる本当の気持ち|『へそ天』『丸まり寝』5パターンに隠された信頼度と健康サイン

快適な睡眠環境が「良い夢」と健康を支える

夢を見るということは、脳が睡眠中に記憶を整理し、心身を回復させている証でもあります。だからこそ、ペットが安心して深く眠れる環境づくりは、健康維持のうえでとても大切です。

ポイント1:静かで安心できる“寝床”を用意する

人の出入りが激しい場所や、テレビの音が大きい場所では、レム睡眠が妨げられやすくなります。壁際や部屋の隅など、背後が守られていて落ち着ける場所 に寝床を置いてあげましょう。体をすっぽり包んでくれるタイプのベッドは、多くの犬猫が安心して眠れる形状です。

ポイント2:室温・光・寝具を整える

暑すぎ・寒すぎる環境は眠りを浅くします。夏はひんやり、冬はあたたかく眠れるよう、季節に合わせた寝具の工夫を。夏場はペット用 冷感マットを寝床に敷いてあげると、深い眠りをサポートしやすくなります。また、寝ているあいだは強い光を避け、薄暗い環境を保つとレム睡眠が安定しやすくなります。

猫が手足をしまって“食パン”のような姿勢で眠るのにも、実は安心とリラックスのサインが隠れています。

▶ 関連記事: 猫の『香箱座り(食パンポーズ)』完全解説|手足をしまう5つの理由と、体調不良を見抜くサイン

ポイント3:留守番中の睡眠をそっと見守る

「留守中、ちゃんと眠れているかな?」と気になる方は、ペット見守りカメラを使うと、寝ているときの様子をスマホで確認できます。ピクピク動く寝姿を見て安心できるだけでなく、後述する“異常なサイン”に早く気づける利点もあります。

「夢」と「発作」はどう違う?飼い主が知っておきたい見分け方

寝ているときのピクピクは、そのほとんどが微笑ましい“夢のサイン”です。ただし、まれに てんかん発作など、注意が必要な状態 と見分けにくいケースがあります。次のポイントを目安に、落ち着いて観察しましょう。

チェック項目 夢(レム睡眠)の可能性が高い 注意が必要なサイン
動きの様子 足先や口元の“ソフトな”ピクつき、走るような動き 全身が突っ張る、激しくガクガク震える
呼びかけへの反応 やさしく名前を呼ぶと目を覚まし、すぐ普段どおりに戻る 呼んでも起きない、意識が戻るのに時間がかかる
目や表情 目は閉じている、または半目でうつろ 白目をむく、よだれを大量に垂らす
持続時間 数秒〜数十秒でおさまり、また普通に眠る 数分続く、繰り返し起こる
起きたあとの様子 ケロッといつもどおり ぐったりする、ふらつく、失禁がある

右側のような様子が見られたら、それは夢ではなく体の異常のサインかもしれません。気になる症状があれば、動画を撮って動物病院で獣医師に相談する ことをおすすめします。発作は本人(犬・猫)よりも、飼い主が撮った動画のほうが診断に役立つことが多いのです。

なお、シニア期に入って夜中に鳴く・落ち着かないといった様子が増えた場合は、睡眠のリズムそのものの乱れが関わっていることもあります。

▶ 関連記事: 老犬の夜鳴きが止まらない理由と対策|認知症のサイン・環境改善・サプリ活用まで

寝ているペットは、起こしたほうがいい?そっとしておくべき?

夢の中で苦しそうに鳴いていると、「怖い夢を見ているのでは」「起こしてあげたほうがいいのでは」と心配になりますよね。

基本的には、むやみに起こさず、そっとしておく のがおすすめです。レム睡眠は記憶の整理や心身の回復にとって大切な時間であり、途中で無理に起こすと睡眠のリズムを乱してしまいます。

また、深く眠っているときに突然触れられると、犬や猫はビックリして反射的に噛んだり引っかいたりすることがあります(いわゆる寝起きドッキリの防衛反応)。これは性格が悪いわけではなく、本能的な反応です。どうしても起こす必要があるときは、体に触れる前に、やさしく名前を呼んで声で存在を知らせる ようにしましょう。

苦しそうに見えても、多くはただ活発な夢を見ているだけです。あまりに頻繁で本人がぐったりしている、といった様子がなければ、温かく見守ってあげてください。

まとめ:ピクピク寝姿は、脳が元気に働いているサイン

最後に、この記事のポイントを整理します。

  • 犬も猫も、人間と同じように レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル を持ち、夢を見ている可能性が高い
  • 寝ているときにピクピク動くのは、レム睡眠中に脳が昼間の体験を再生し、筋肉のブレーキが完全ではない ため
  • MITのラット実験では、動物が 迷路を走る夢 を見ていることが脳活動から示され、スタンレー・コレン博士の紹介する研究では、犬が 犬種ごとの“らしい”夢(レトリバーは回収、ポインターは指し示し)を見ることが示唆されている
  • 猫は 狩りの夢 を見ているとされ、ヒゲや前足の動き・小さな鳴き声はそのサインかもしれない
  • 快適な睡眠環境(静かな寝床・適切な室温・見守り)は、良い眠りと健康を支える
  • ほとんどのピクつきは微笑ましい夢のサインだが、全身の硬直・呼びかけに反応しない・長く続く 場合は発作の可能性もあるため、動画を撮って獣医師に相談を
  • 眠っているペットは、むやみに起こさずそっと見守る のが基本

愛犬や愛猫が見せるピクピク寝姿は、脳が元気に働き、今日一日の楽しかった思い出を反すうしている証。今夜、あなたのそばで眠るそのコは、いったいどんな夢を見ているのでしょうか。


出典・参考

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

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